「外れ値」のコンサルタントが活躍する時代
生成AIの普及で、コンサルティングの世界にある種の逆説が起きています。
AIがリサーチ、分析、資料作成を高速でこなすようになった結果、「平均的に優秀な」コンサルタントの市場価値はほぼ0になりました。情報の収集と整理、ベストプラクティスの横展開、フレームワークの当てはめ。この手の作業はもうAIの独壇場です。同時に、AIの書いた内容をそのままクライアントに提出するような、「AIに使われている」コンサルタントもよく見かけるようになりました。
一方で、これまで異質な存在として扱われていた「外れ値」を持つ人間の価値が増しています。
ここでいう外れ値とは、豊富な知識(業務だけに留まらない人間的な、尖った情報/ 視点の引き出し)と実行力(考える前に体が動くタイプ)を兼ね備えていることです。
AIが平均値を瞬時に弾き出す時代だからこそ、平均から外れた場所にいる人間。組織の課題や新事業の詰まりを独自の視点から分析し、企業のしがらみにとらわれず対等な目線で提案する存在が、新たな時代のコンサルタントだと私たちは考えています。

AI vs. AI 「AIが言ってたから」の世界で、何が差を生むのか
ある企業の経営企画部にて。
提案する側がAIで市場調査を行い、提案書のドラフトを作る。受け取る側もAIで競合分析や裏取りをやり、提案内容を検証する。会議の場では、双方が「AIでの分析結果によると」と切り出す。生成AIが出した洞察同士がぶつかり合う。
双方のAIが綺麗な答えを出すほど、「最近のAIは本当にすごいですね」という乾いた声が会議室に響きます。
結論の質が問題なのではありません。「何を解決すればいいのか」「自社で本当にやるべきか」「誰がやるのか」大事なことだけ一向に決まらない。それが実態です。AIが出す答えを戦わせることは、自分では到底説明できない数千文字の「文字列」を生み出す作業です。
私たちは、問う→考える→動くの両端にある仕事にこそ価値があると考えています。
一つ目の端は「問いかけを作ること」。
何を調べるか、何を解くべきか。そもそもこのプロジェクトは進めるべきか。AIは与えられた問いに最適化された回答を返しますが、問いそのものの妥当性を判断する力は持っていません。
二つ目の端は「実現し切ること」。
戦略を描いた後に、実際にプロジェクトを前に動かし、関係者を巻き込み、壁にぶつかったら組み替え、最終的に成果を形や合意にする。ここはAIのアウトプットでは代替できません。
つまり、ビジネスパーソンが挑むべき領域は、「問う」ことと「やり切る」ことの両端に絞られてきています。そして、AI時代のコンサルティングが向かう先も、やはりこの二つの端にあると言えるでしょう。
Northboundが持つ「5つの視点」
もう少し具体的に、私たちが重視している5つの視点をご紹介したいと思います。
1. プロジェクトのデザイン・問いのデザイン
本質的に、コンサルタントの出す「解」に価値はあるのでしょうか?
「この立地で商業施設を開発すべき」ではなく、
「人口減少が続くこの地域に投資する意義はあるか、または、地域課題を解決できる見込みはあるのか」。
「こうすれば帳尻が合う」ではなく、
「そもそもこの事業を進めて本業と肩を並べる売上規模にすることは現実的か、または、社会貢献などの指標が無視されていないか」。
クライアントが漠然と感じている違和感を言語化し、私たちの視点から解くべき問いとしてリデザインする。問いの精度がプロジェクト全体の射程と成否を決めます。
問いが定まったら、プロジェクト全体の進め方を設計します。何をどの順番で検証するか。どこに意思決定の重みを置くか。どの段階で外部(誰)を巻き込むか。この「プロジェクトデザイン(計画的妄想)」の精度が、後工程で効いてくるコンサルタントの腕です。
2. 調べても出てこない知見とヒューマン・ネットワーク
AIが得意なのは、(表向きはポジティブな)公開情報の高速処理です。しかし、まちづくりや都市開発・新規事業開発の意思決定を左右するのは、多くの場合「調べても出てこない」生々しい情報です。
表向きは成功したスマートシティ。
でも裏側は運営委託先に愛想を尽かされ、担当者がエクセルで成果を作ることに躍起になっている大型再開発。
開発計画にはキラキラのデータ連携のお題目が並ぶものの、数十億の公金を投じて出来上がったものは、交通量を測るだけの誰も使わないアプリ。
一見儲けどころの薄いPFI案件でも、ある条件を満たせばデベロッパーは諸手を挙げて提案書を書く。そのカラクリ。
真面目にオフィスを作ることの哀愁。表面的には機能的なオフィス(IoT)を望みながら、社長室に10億以上かける経営者...。
新規事業でも、真面目にステージゲートを設定し、アイデアを発散させ、評価基準でふるいにかけるだけで事業がうまくいくことなどありません。成果は"描ける"でしょうが。
現実に必要なのは、さっさとプロトタイプを作り、コネやネットワークから外部の協賛者を見つけ、彼らのニーズにピンポイントに刺しに行く。実績を1個でも2個でも作って「勝ち馬」として認知されること(当期トップライン→見込成長率で語る)。プロダクトは、安価・分かりやすいフック商材と、重点顧客向けのマネタイズエンジンを設計し、早々に業務を自動化して広告展開。案件を徐々に営業→問い合わせ由来(費用対効果が出しやすい)に遷移させ、ケースバイケースの個別対応を減らす。コンサルを活用してここまでをバイパス。担当者は自社技術やノウハウ・取組の意義を経営層に語れるように入念に準備・根回しを行う...。
と、誰が教えてくれるでしょうか。また、現実に企業の実態と現場の進め方のノウハウを行ったり来たりしながら支えてくれるメンバーは社内にどのぐらいいるでしょうか。
Northboundのコンサルタントたちは、全員がそれぞれに積み上げてきた経験とヒューマン・ネットワークを通じて「意味のある知見」をクライアントに届けます。
3. クイックビジネスデザイン
AIの恩恵を最大限に使うのも、私たちの仕事です。
クライアントの事業課題に応じたAI活用ツールの開発。新規サービスの初期プロトタイプを実際に動く形で構築する。クライアントの既存サービスとコンサルティングの知見を融合させた、新しいサービスの初期版を共同で作り上げる。こうした「形にする力」が、戦略の説得力と実行のスピードを変えます。
従来のコンサルティングは、PowerPointで方向性を示して終わることが少なくなかった。しかしAIを活用すれば、仮説を検証するためのツールやプロトタイプを短期間で立ち上げられる。「まず動くものを作り、ユーザーの反応を見ながら磨く」。机上の戦略が、数週間で一気に実証の段階へ移る時代がやってきました。
(具体的な開発物については、別の投稿にてご紹介予定)
4. 柔軟なプロジェクト運営と、率直な提言
私たちがクライアントから最も評価いただいているのは、プロジェクトの途中で「形を変えられる」柔軟さと、フラットな目線で会話する率直さです。
大枠のスケジュールは設定します。ただし、その枠を固定的なものとは捉えていません。プロジェクトを進める中で、新たなアイデアが生まれる。社内の状況が変わる。市場/ 顧客から想定外のフィードバックが返ってくる。そのとき、当初の計画に固執するのではなく、プロジェクトの形そのものを組み替えながら、常により良い方向を模索し続けます。
そして、市場環境や競合動向を客観的に評価した上で、「この領域に投資するプロジェクトは有望ではない」と判断すれば、そのことをなるべく早く、ストレートに伝えます。本当に意味のあるコンサルティングは、止めることの支援かもしれません。経験値と定量データ、客観的な複数の観点に基づき、感情論に流されない意思決定の土台を作ることが、外部の人間だからこそ担える役割だと考えます。
5. 推進力
コンサルティングは、社内政治のための武器や、IR向けの情報収集手段として使われることがあります。それは1980年代頃から続く、大型ファームの一つの役割です。
しかし、一般的に知られた情報を調べてまとめて形にするという工程(U字カーブの中間部分)には、もはや付加価値と呼べる余白はほとんど残っていません。AIがその大部分を代替できます。
では、新規事業の初期顧客に対するアプローチ資料は、誰が作るか。初期面談の場で顧客の構造的なニーズを引き出すのは、誰か。そこから得られたインサイトをもとにプロダクト改善の仕様書を書くのは。新事業の契約書を起草するのは。これらはすべて、資料の「その先」にある仕事であり、多くのプロジェクトが実際に詰まるのは、まさにここです。
企業間連携や官民連携では、関係者の数が増えるほど推進力が失われやすくなります。利害の調整やスケジュールの管理、意思決定の催促といった地道な仕事が(AIで分析が速くなった分だけ)一層目立つボトルネックになっています。
美しいスライドを作って終わるコンサルティングでは、ここに手が届きませんが、Northboundは実際にヒト・モノ・カネ・情報を動かすことに価値を感じていただいています。
おわりに
思えば、1910年代に会計を基礎としたコンサルティングが始まってから、その役割は2000年前後にIT主導のものへ変化し、今般の細分化されたコンサルティング市場が形成されてきました。
Northboundは、近年の大型ファームにはない視点とアプローチで、まちづくり・都市開発・インフラ領域の課題に向き合っています。ぜひご相談下さい。
